とある地域の事例検討

  • 2月 24, 2021
  • 9月 13, 2021
  • 福祉
  • 28view

  今回はソーシャルワークの展開過程を述べ、その過程に基づいた事例を紹介したいと思う。

ソーシャルワークの援助展開過程

ソーシャルワークにおける援助関係は、一定の過程を通じて展開される。それにはクライエントの問題を明確にし、その問題状況やニーズのアセスメント、援助目標と課題の設定、そして援助計画を立て、実施し、それを評価するといった過程がある。

 ソーシャルワークには、問題を抱えている個人・家族・グループを直接支援する個別援助活動・小集団援助活動や、地域全体またはその中に住む一定の人々のため、サービスを計画し、提供するなどの関節援助活動がある。直接・間接援助活動は、使われる援助技術が対象とクライエントによって異なるため分けられるが、援助過程はほぼ同じプロセスを踏んで展開される。プロセスとしては、クライエントに起こっている問題やニーズを把握するインテーク、次にその問題やニーズが起こった原因を他職種と連携し、分析を行う。それを基に目標を立て、援助活動を実施する。そして活動がどの程度効果があったのかを評価する、といった順番をたどっていくこととなる。

援助において必要となる視点

 ソーシャルワークの援助展開は上記で述べた通りであるが、そこに当てはめるだけでは適切な援助はできない。現代は生活状況などが目まぐるしく変化していることもあり、個人の問題を地域の問題と捉え、住民主体で解決法を探る考え方が重要視されている。

 例えば、従来の社会福祉は主たる対象を貧困としてきたが、現代社会には心の障害・不安、社会的排除や摩擦、社会的孤立や孤独といった問題などがあげられる。個人の問題が発生しているということは言い換えれば、地域住民の視野から外されていること言うことができる。そのため、個人が地域社会へとつながる関係を作り、地域の住民や民生委員、ボランティアの人々と協力し、自立した地域での豊かな生活が送れるように支援する必要がある。

事例検討

 個別支援から地域支援につなげるにはまず、地域内で起きている問題や潜在している問題について問題意識を持ってそのニーズを発見することが重要である。個別事例との出会いからヒントを得たり、地域調査を行うことなどから、満たされたニーズと満たされていないニーズを見つけることができる。

 

 ここでは1つの事例として、ごみ屋敷への介入を行った認知症高齢者Aさんの支援事例を取り上げてソーシャルワークのプロセスを述べたいと思う。

 援助活動を行う前にまず、地域問題の発見と地域福祉ニーズを発見する必要がある。今回の地域問題としては大量のごみによる異臭である。

 地域の潜在的なニーズとしては年々、認知症と診断される高齢者の数は多くなっており、ある程度認知機能が低下した一人暮らしの高齢者が在宅で生活するには身近な家族、また地域という身近な環境からの支援は欠かせないものとなっている、と感じているところにある。

 次に身体状況と認知機能、親族関係と地域とのつながりについて考察していく。Aさんの身体状況としては、糖尿病を患ており血糖コントロールのため入院するも、間食をやめることができず、治療困難となり退院となった。また介入時は、ADLの低下は見られないが、食事は十分とれず痩せていた。次に認知機能としては発見時から低下が顕著であり、自宅は足の踏み場がないほどに物が散乱していた。また親族関係や地域とのかかわりもほとんどなかった。

 ここで重要な問題となっているのが地域からの孤立しているという状況である。時として地域は排除の力が働く一方で、ケースの発見には重要な働きをする特徴があり、住民に対する理解を得る必要がある。

 結論から言うと、この問題の支援目標としては、ごみそのものについてではない

 血縁・地縁関係が薄れつつある今日、ごみ屋敷の問題は地域での社会的援護を要する人々への対応への問題もある。そのため本人自身が解決困難となっている問題に対して、社会福祉士等が介入し、個人の問題を地域や社会へと共有する必要がある。

 これを解決する対策として「地域包括ケアシステム」の考えがある。地域住民としては、認知症高齢者が身近に暮らしていると、すぐにでも行政の権限で施設入所を望む声も中にはあるが、保健医療福祉の専門職が支えていくことで安心感を与え、一住民の立場として見守りやごみ出し支援など、地域住民が支援者側へ変わっていくきっかけ作りを期待することができる。また、このケースをきっかけに地域住民が何らかの困りごとを気軽に相談できる福祉なんでも相談窓口を設置することで、地域住民に対し正しい情報提供と適切な支援を行えると考える。

 このケースではごみ屋敷に住む高齢者への個別支援から地域社会へと視野を広げ、支援を行っていた。このような政策を行っていくことで「地域の他の人にもAさんの状況を知ってもらう」ことができ、地域住民も少なからず持つ「今後自分も同じ状況になるかもしれない」という不安が解消され、地域住民にAさんを見守り、支援していく意識が芽生えるのではないかと考える。

 今回紹介した事例のプロセスから、地域住民がAさんの抱える生活のしづらさを知り、共有することで、Aさんへの理解が深まりことが分かった。また今回のように地域住民からの支援が重要な理由に制度上の問題もある。今回のようにごみ屋敷の問題では、これまでの我が国の福祉制度では、十分な対応が困難な狭間にある問題にあるのである。ごみ屋敷の問題以外にも、今日社会福祉制度が充実してきた一方で、その枠に収まらない社会的支援を要する人々が制度の谷間にいる現状が、厚生労働省の「社会的な援助を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」報告書や「地域における新たな支え合いを求めて・住民と行政の協働による新たな福祉」報告書においても指摘されている。

事例を通して知ってほしいこと

 今回のケースであるAさんのように、地域において困りごとを抱えた人が他にも存在しているはずである。一人の支援にとどまらず、地域全体に目を向けることは、地域の中で同じように生活のしづらさを抱えている人の存在に気づき、支援を考えることにつなげることができる。現在の社会では単身世帯や高齢者世帯の増加等、家族のあり方の変容やライフスタイルの多様化に伴い、生活課題が複雑化し、専門職と地域住民の協働による「地域での支え合い」が重視されている。地域での支え合いの意識が高まれば、困りごと複雑化・重層化する前に、早期発見でき、解決につなげることができる。そのためには、生活の中でのちょっとした気のかけ合いや見守り、気づきが支え合いの仕組みづくりの第一歩となる。一人のニーズを受け止めていくことと、一人の課題を地域の課題として、地域のみんなで気づき、考え行動し、地域の福祉力を高めることを一体的に進めていくことが今後さらに求められる。

最新情報をチェックしよう!