人間の発達段階。児童期に起こりがちな危機、対応について

  • 2月 24, 2021
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  • 福祉
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 人間の発達の時期として、どのように区分するのかについては研究者によって意見が分かれている。また、発達の時期を区別しないで、発達は連続的であるとする考え方もある。今回は発達の時期を胎児期、胎児期、幼児期、児童期、幼児期、児童期、青年期、成人期、中年期、老年期に分類し、とりわけ児童期について詳述していきたいと思う。 

児童期について

 小学校6年間の児童期でもっとも大きく変化するのが、身長や体重といった目に見える部分の変化である。成人ではほとんど変化がないこうした測度は、ほぼ一次関数に近いような形で、年齢の変化にともなって確実に増えていく。その変化の割合は、実際には乳幼児期の方がずっと大きいが、児童期にはこの身体の見かけ上の大きさの変化が、運動能力の変化にもつながっている、というもう1つの大きな特徴をもっている。

児童期の運動能力

 運動能力には、長座体前屈、握力、上体起こし、反復横跳び、50m走、20mシャトルラン、立ち幅跳び、ソフトボール投げがあげられ、その運動能力において、男女の性差が大きくあらわれる。こうした運動能力の性差は、単なる成長・発達が生み出すだけでなく、小学校から中学校へという学校種間の移行とそれにともなうジェンダーの意識のあらわれという側面もあることも重要である。 

児童期の性特徴

 児童期の後期は、男子で精通、女子で初潮という二次性徴の始まる時期であり、こうした時期の子ども達には適切な心構えを含めた助言が必要とされる。この時期は、心と体のアンバランスで精神的にも不安定になりやすい。こうした二次性徴の発言は時代を追って徐々に早くなっており、これを成熟前傾現象とよぶ。また、同時に時代を追って同年齢の子どもを比較すると身長・体重等の値は徐々に大きくなっており、これを成長加速現象という。さらにこの2つの現象を総称して発達加速現象とよんでいる。 

児童期の認知発達

 児童期は認知発達にとって劇的な変化の見られる時期である。ここではピアジェの認知的発達理論の枠組みを援用すると、以下のような発達のようすが見られる。ピアジェは、認知発達の基本を、主体と環境との相互作用としてとらえた。人間は生まれた段階で、生命維持装置としてさまざまな反射行動のレパートリーとしてもっている。頬に何かが触れた、その方向に顔を回転させる(ルーティング)。顔を動かせば唇に乳首があたる。そうするとそれを口に取り込み、吸い始める(サッキング)。吸い始めると母乳がでてきて、口に入ったものものは飲み込む(嚥下)。こうした一連の行動をシェマという。そのシェマが対象としているものがエイリメントである。生命はこうしたルーティング、サッキング、嚥下といった一連のシェマと、乳首・母乳といったエイリメントの相互作用で維持が図られる。シェマにエイリメントを取り込むことを同化、エイリメントがシェマを要求することを調節と呼ぶ。例えば「握る」というシェマに母親の指やお箸などを触れれば文字通り「握る」(同化)ことになるが、大きなぬいぐるみの足があてがわれた時には、そのままでは握れない。そこでいったん手のひらを大きく開いて(調節)、その後握る(同化)。このように、人間の行動は同化と調節のの繰り返しと見なすことができる。そのくり返しは、同じ平面上で同化と調節をくり返すのではなく、螺旋状に変化していく。しかしながら基本的にはシェマとエイリメントのバランス関係は普段の修正であり、これを均衡化という。したがって、発達とは同化と調節のくり返しによる均衡化過程であるともいうことができる。 

 ピアジェはこうしたシェマの変化過程を、4つの段階に分けた。

 ①2歳頃までの特徴的思考の感覚運動期である。これは感覚運動的シェマと「モノ」のエイリメントで成り立つことである。

 ②7歳頃までの特徴的思考の前操作期である。これは「モノ」の背後の「イメージ」や「シンボル」を用いることができるシェマに変化していくことである。

 ③小学生になる児童期の特徴的思考の具体的操作期である。これは「概念」をエイリメントにもつシェマが活発に用いられる時期のことある。

 ④11~12歳頃からの特徴的思考の形式的操作期である。これはシェマは完全に具体物から切り離されたシンボルや数値の操作が可能なものとなり、エイリメントにはそうした、理論・数学的なシンボルが用いられるようになるものである。ここでは、抽象概念や知識が新たなシンボル操作を可能にし、具体物から完全に切り離された理論・数学的世界が構築されるのである。 

小学生の児童期

 小学生の児童期に入ると、生活圏も交流する年齢層も拡がり、社会性の発達についても飛躍的な進展が見られる。児童期の社会性の発達には、学校内での教室活動が大きく貢献する。そのため、教授学習活動を中心とした学級内での子どもたちの諸活動の量的・質的なアレンジメントに関わるフォーマルな活動の役割は大きい。しかし、実際の社会性の発達は、インフォーマルな遊びの場面で培われることが多い。遊びとは認知機機能の発達にとっても欠かすことができない重要な機能の1つであり、その形態には以下の5つがある。

 ①傍観

 ②ひとり遊び

 ③平行遊び

 ④連合遊び

 ⑤協同遊

 また、児童期の遊びで典型的なものが、4~5名の同性の、きわめて排他的な仲良し集団での遊びである。ここでは多くが連合あるいは協同遊びであり、時には他の集団に対して攻撃的にさえ映ることもあるこうした時期をギャングエイジと呼ぶ。その他にも、児童期の社会性の発達の重要課題に、他者の感情や意図を適切に理解し、共感性にもとづく向社会的な行動がとれることがあげられる。この時期の子どもには、他者のために自発的に行動する場面が見られるようになる。それは、その子ども自身が日常的に保持している道徳観や正義感、その子のもっている共感性の強さといったパーソナリティ要因、相手との関係といった個人的要因などがそうした行動を生み出すのである。 

 精神分析家のエリクソンは、家族や友人との関係の中で発生した動機に加え、自己をコントロールするという人生を視野に入れた発達段階を述べている。この理論では、それぞれの発達段階には成長や健康に向かう発達課題と、衰退や病理に向かう危機がせめぎ合っており、その両方の関係性が人の発達に大きく影響するとしている。児童期の発達課題と危機は「勤勉性」と「劣等感」である。この時期の子どもは、活動に意味や興味を見いだせるものがあり、それが達成されるなら、その子どもの自己評価は豊かなものとなってくる。しかし、家庭生活や学校生活での不満や過度な失敗が続くようであれば、劣等感を抱くことがある。危機の大きな要因の1に不登校がある。不登校の原因には、友人関係をめぐるトラブルや学業不振などがある。また、家庭生活での不適切なコミュニケーションが原因となる場合もある。不登校(危機)が継続してしまうと、個人のパーソナリティの形成が困難となったり、自己肯定感が生まれにくくなる。こうなると認知機能や社会性の発達に遅れが生じてしまう。

 このような観点からもこの時期に関わる家族や教師は子ども変化にいち早く気づき、次の青年期につながるより良い成長のサポートに努めなければならない。

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