我が国の高齢化の推移
日本は世界最速で高齢化が進んいる。日本の高齢化率は1970年の国勢調査で7.1%となり、高齢化社会に突入した。その後、1994年の国勢調査で14.5%を示し、高齢社会に突入したことが明らかとなった。さらに、2007年の人口統計では21.5%まで上がり、超高齢社会を迎えた。2010年の国勢調査では23.0%という数字が示された。さらに2010年の国勢調査では23.0%という数字が示された。さらに、2014年では25.9%と、大幅な高齢化が進んでいる。
介護の社会問題化
高齢化が発展するにつれ、日常生活で介護を必要とする人が増えており、従来、介護は家族が担っていたが、核家族化や女性の社会進出などにより、「介護」が社会問題となっていた。
寝たきり高齢者のうち約半数の人が、寝たきり期間が3年以上に及んでいることが示され、介護の長期化が家族介護者の疲弊を招く心配も問題の1つとされていた。さらに、家族介護者のおよそ半数が60歳以上という老老介護も問題視されていた。このような問題点を踏まえ、介護の概念、対象、理念は大きく変化してきた。
介護とは何か
介護とは「高齢者・病人などを介抱し、日常生活を助けること」と一般的に考えられている。専門的にな介護の定義に関しては、現時点でも定説とはなっていない。
各研究者の介護の考え方
源田尾
ケースワーカーという専門職が担う介護の定義としては、対象者、目的、方法を包含していることが共通しており、自立の促進が目的とされているとの見解。
小池妙子
「介護とは、高齢者・障害者など要介護の生活の場における日々の生活行為について支障が生じ、他者の援助を必要としている人に対し介護の立場から行う継続的援助である」としている。
この他にも介護に携わるさまざまな人が介護の定義について述べているが、共通して言えることは、
介護とは、日常生活に支障がり、またはそのおそれがある高齢者や障害者・児の尊厳や自立、自己実現などを支えるために、本人のニーズと心身の状況に応じた身体的・精神的・社会的・文化的・予防的援助により、その人らしい生活を援助することである。
介護の対象
そのような中で、介護の対象は、一般的には自立した日常生活を営むことが難しい人が当てはまるが、対象者の生活面、心理面、社会面、身体面の相互作用により必要な支援は異なっている。
生活面
障害発症以前にはできていた入浴や食事などを家族や専門家に委ねることにより、ADLの方法のみならず、生活習慣の変更も余儀なくされる場合、生活環境の変化に対して、利用者が培ってきたその人らしい生活やノーマルな生活のあり方を念頭におきながら、生活を再構築する支援が望まれるとしている。
心理面
介護を要する状態となり、生活のはりや楽しみの喪失、自身の障害の受容困難、家族、職員等との人間関係など、さまざまな心理変化をもたらすとされており、このような状態に対し、まず、利用者が、自宅や施設を安心できる居場所として認識することが重要であるとしている。そのためには、利用者の願いやストレングスなどについて、多様な側面から理解することが重要となる。
社会面
介護を受ける利用者の中には自宅にひきこもりやすい傾向あると指摘されているため、障害発症以前と同じように、美容院や温泉、レストランや買い物、友人との外出等を継続的に行えるように、物理的・人的・経済的な環境を整えることが重要としている。
身体面
寝たきりによる廃用症候群等を悪化させないために、可能な限り残存機能を活用し、主体的にできることを増やすことが重要としている。利用者自身が無理なく目標をもち継続できるようにリハビリテーションを生活行為のなかに取り入れ、ADLを拡大していくことが求められる。
介護を受ける利用者の中には自宅にひきこもりやすい傾向あると指摘されているため、障害発症以前と同じように、美容院や温泉、レストランや買い物、友人との外出等を継続的に行えるように、物理的・人的・経済的な環境を整えることが重要としている。4つ目の身体面では、寝たきりによる廃用症候群等を悪化させないために、可能な限り残存機能を活用し、主体的にできることを増やすことが重要としている。利用者自身が無理なく目標をもち継続できるようにリハビリテーションを生活行為のなかに取り入れ、ADLを拡大していくことが求められる。
介護の理念
介護の理念には以下の2つの原則が含まれている。
①介護の目的となる目的的価値
目的的価値さらに、人間の尊重、自立支援としての自己実現、エンパワメント、QOLの4つが含まれている。 このような目的的価値の中でも、エンパワメントは介護過程の展開において重要な考えである。
エンパワメントの視点
エンパワメントの視点には、「人はもともと能力を持っているが、社会的な条件により制約されている。そのため、社会的な条件を整えることで、本来持っている力を発揮できるように支援する」という考えが根底にある。
能力や知識、経験など、利用者が持っている強さをストレングスという。前述のエンパワメントの考え方は、このストレングスに着目することが根底にある。「障害があるからできない」と捉えるのではなく、「障害があるが、どうすればできるか」というように、利用者の能力に焦点を合わせて可能性を探る必要がある。
エンパワメントを活用した例
ここでエンパワメントを活用した例を述べたいと思う。Aさんは右利きの人が右半身麻痺を患い、身の回りの道具が使いにくくなった。右利きということもあり、箸も鉛筆も上手く持てず、当たり前にできていた着替えなどもしにくくなった。ある時、介護者は、Aさんが鉤型にぎりなら物を持つことができることに気づいた。そこで、大きめの箸や鉛筆を用意したところ、扱えるようになり、以前よりも自力でできる行為が広がった。このように、利用者の足りない能力や制限されている能力にばかり着目するのではなく、持っている能力や発揮できる能力に着目することが重要となる。
②目的的価値の達成手段となる手段的価値
1つ目の目的価値は、介護理念の2つ目の手段的価値は、あるがままに受け止め、利用者の理解に努めること、感情表現を大切にし、生きる喜びと意義を見出すこと、自己決定尊重、生活習慣・文化・価値観の尊重、信頼関係を基盤とした対等な協働関係、安全・安楽・安寧・予防の視点、ICFによる身体的自立の支援、家族や社会との交流を深めること、ケアマネジメントにおける他職種連携・協働を図ることが含まれている。
このような手段的的価値の中でも、あるがままに受け止め、利用者の理解に努めることは重要である。
一例として、コミュニケーションにおいて利用者を理解する方法としてバイステックの7原則がある。バイスティックの7原則はそれぞれ、個人として扱われたい、感情を表出したい、親身になって応答してもらいたい、価値ある人間として認めてもらいたい、審判されたくない、自分自身で選択と決定をしたい、自分の秘密を守りたい、という欲求から導きだされたものである。ワーカーにこれらの欲求を受け止め、理解し適切に応答するものである。
ソーシャルワーカーとケアワーカー
ここまで介護とは何かについて述べてきたが、ソーシャルワーカーがケアワーカーと連携する上では、これらのことは理解しておかなければならない。
ソーシャルワーカーがケアワーカーと連携・協働して利用者中心の介護を展開していくためには、介護の専門性や理念・価値を理解することが基盤となる。そのことによりさまざまな活動の場において、ソーシャルワーカーはケアワーカーと目標の共有化を図り、困難な課題にも立ち向かうことができるのである。