児童養護の意義と基本原理について

  • 2月 24, 2021
  • 9月 13, 2021
  • 福祉
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 現在の社会問題として青少年の自殺や児童虐待や青少年の犯罪に関して、子どもの生命が危機的な状態に置かれているという深刻な問題がある。このような問題に対し、子どもや家庭の支援を目的として児童福祉施設が設置されている。児童福祉施設で取り組まれている養護活動は、児童にとっては家庭に代わる「生活の場」としての支援を受ける大切な環境であり、国の責任において実施される「きわめて責任の重い養護活動」である。 

児童を養護する活動

 養護活動は「きわめて責任の重い養護活動」といわれているため、基本原理を十分に理解し、児童の発達・成長や社会的自立などを支援しなければならない。子どもの生活の拠点であり、援助の基盤でもある施設の基本原理は以下の3つがある。

 ①「子どもの最善の利益」である。これは、「児童の権利に関する条約」で使われている表現である。この条文の内容にもあるように、子どもの最善の利益とは、大人の都合や、「大人が、子どもにどう育ってほしいいかと考えているか」、あるいは「大人が規定した、正しいこと」ではなく、子ども自身が絶対的に最優先であり、「子どもが自分自身のことを考えた時、どう育つのが、自分にとってよいか」なのである。施設職員はさまざまな困難を経験してきた子どもと向き合うことになる。これまでの体験が壮絶であるがゆえに、子どもたちは大人に対してひどく絶望し、また、拒否的・拒絶的なこともしばしばだが、子どもたちに対して、「われわれの常識」を求め、押しつけるのではなく、まず子どもを理解しよう、子どもの気持ちを汲み取ろうとする姿勢が重要である。

 ②安全・安心の保障である。児童養護施設で生活する子どもたちは、入所以前、何らかの形で自身の安全・安心が脅かされる状況にいた。施設での生活を始めるにあたり、まず、「ここは安全な場所である」と、子どもたちが理解できることが重要である。

 ③「ニーズ」を判断する視点である。これは、漫然と子どもの欲求に応えることばかりでは、子どもの最善の利益を望むことはできないということである。われわれが「子どもの最善の利益」を考える際には、「子どもの欲求に応える」という点について、中長期的なニーズに着目することが不可欠である。これについてブラッドショウは、以下の4つにあるように「福祉ニーズの4つの概念」を提案している。

第1のニーズは、「ノーマティブ・ニーズ」である。これは、ニーズを持つ本人ではなく、専門家が「本人は望ましい状態からかけ離れており、それを補う必要があると判断するものである。

第2のニーズは、「フェルト・ニーズ」である。これは、ニーズを持つ本人が、その必要性を自覚しているニーズである。

第3のニーズは、「エクスプレスド・ニーズ」である。これは、本人がニーズを自覚した上で、利用を申し出たニーズである。

第4のニーズは「コンパラティブ・ニーズ」である。これは、「何らかの援助を受けている子どもと比較して、それと同じ状況にありながらも、援助を受けていない子どもがいたとき、ニーズがあると考えるものである。

 このようなニーズを子ども自身の主観的なニーズと、施設職員が捉える客観的なニーズとして組み合わせ検討することで、適切ニーズを把握することができる。上記のような基本原理のもと、施設養護は成り立っている。 

施設養護における支援

 施設養護の基本原理に加え、施設養護の支援において、子どもがこれまでどのような生活を送っていたのかということに注目することが重要となっている。たとえば「しつけ」と称し、虐待を受けていた子どもがいたとする。「しつけ」は叱られる理由があり、「次からは、叱られるようなことはしない」と、子ども自身がコントロールできるものである。しかし、虐待は、親の都合や身勝手で起きるものであり、子どもはその理由を理解することができず、自ら虐待をコントロールすることもできない。そのため、常に「次はいつ、虐待されるのだろうか」という緊張・不安の状況下にある。このような生活を続けてきた児童にとって、入所したばかりの施設は、「ここも虐待される場かもしれない」という、不安に満ちた場である。当然、職員も「虐待するかもしれない人」の一人であるため、職員の言葉がけや態度、周囲の子どもたちの様子などから、徐々に、ここが安全な場所であると理解していくのである。われわれが子どもを叱るとき、頭の中では、「子どものために、子どものためを思って」と考える。しかし時として、自分の欲求が優先されてはいないだろうか。「わかってほしい、気づいてほしい」という思いがあるとしても、このように考えているのは子どもの方ではないだろうか。子どもに対し、「わかってほしい」とことらからボールを投げるより、まず、子どもからの「わかってほしい」というボールを受け止めることから始めたい。そのためには、施設職員が、子どもたちが声なき声を「わかってあげたい、気づいてあげたい」という気持ちからスタートすることこそ、施設養護の第一歩なのである。 ただし、子どもの安心を優先するあまり、職員が、過度に「抱え込む」ことは避けなければならない。施設職員は親を代行しているのではなく、専門職集団の一員として、子どもの養護を担っているのである。子どもの不安の大きさや、欲求の増大に戸惑う場合には早期に他の職員とも情報を共有し、一部の職員だけが疲弊し、バーンアウトするような事態を避けなければならない。なぜなら、バーンアウトは、職員自身にとってつらい経験であると同時に、仮に職員が退職などした場合、子どもにも、「自分のせいで、先生が辞めた」という負担感や、あるいは「信頼できると思った人が、目の前から消えた」という、見捨てられた体験を重ねさせることになるからである。

 このように、施設養護において適切な援助を展開するためには、まず、その対象である子どもを正しく理解することが重要なのである。しかし、一口に理解するといっても、その方法や視点はさまざまである。また、近年では養護問題が複雑化・多様化しており、知的障害・身体障害・精神障害を患っている障害児童や、虐待を行ってしまった親への支援、子どもが万引きや傷害などを行った児童の環境など多くの視点を持ち、接していかなければならない。一人一人違う、つらい経験をした子どもにとって、自分の居場所となる施設での生活は重要な部分であり、すべての基礎となるものである。だからこそ専門職である施設職員は、高い人権意識と、子どもの特徴を敏感に感じ取る感覚と専門的対人関係のスキルが求められるといえる。

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