生活習慣病とは
生活習慣病はかつては成人病と呼ばれていたが、成人は、成年に達したときに出てくる病気を指し、脳卒中、がん、心臓病の「三大成人病」の他、その元となる糖尿病や高血圧性疾患なども含まれていた。
戦後のわが国では、戦前の伝染病や結核、乳児の死亡率は低くなったものの、経済状態が良くなるにつれ成人病疾患が増えていった。しかし、研究者の調査や諸外国との比較研究により、それらの病気は単なる加齢現象というよりも、長年にわたる本人の生活習慣のゆがみが積み重なって起こる疾患、という意味合いが強いことが明らかになってきた。そこで平成1997年、国によって「生活習慣病」という呼称が採択され普及させていくことになり、現在に至っている。
生活習慣病の患者数と医療費
生活習慣病の総患者数は、脳血管疾患118万人、がん163万人、心疾患173万人となっており、これらを合わせた生活習慣病が死因の約6割を占めている。また、それにかかる医療費については、平成25年度国民医療費によると、がん3兆3792億円、脳血管疾患1兆7730億円、心疾患7503億円となっている。このことから生活習慣病が私たちの生活に与える影響が非常に大きことが分かる。
生活習慣病対策
生活習慣病を解決する手段は治療よりも予防、その予防も、子供の頃からの生活習慣を正すことが大切になっている。ただし、疾病の発生には「生活習慣要因」だけでなく、「遺伝的要因」「外部環境要因」など、個人の責任に帰すことのできない複数の要因が関与している。「病気になったのは個人の責任」といった疾病や患者に対する差別や偏見が生まれないようにも配慮しなければならない。
そのようなことを踏まえて、厚生労働省は生活習慣予防対策として、1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後にクスリとの標語を掲げ、日常生活で何を取り組めば良いか、具体的なプログラムを示している。この中でも特に運動を日頃から行っている者は総死亡率、心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸がんなどの罹患率や死亡率が低いことが明らかとなっている。これらの根拠としてRouxの機能的適応に関する形態学的法則がある。
Rouxの機能的適応に関する形態学的法則
この法則によると、活動や運動により身体は以下のように変化するとされている。
1、活動の強度を増すことによって、使われた器官の大きさが増大する。 2、不活動なら、その活動に見合った器官の大きさに委縮する。 3、長期にわたる機能向上の制限は、その器官の特殊な活動能力を減退させる。 4、合目的的な機能的構造の自己形成ができると記されている。
さらに、適切な運動により、肺の働きが良くなる、心臓の働きの効率を高める、血管を発達させる、身体全体の血流量を増やす、筋肉と血管の緊張度を増し引き締める、体脂肪を減らす。酸素の運搬や供給効率を高める、精神を安定させ、ストレスに対する抵抗力を増す、などがある。このように運動とは直接健康に結びつく行為であり、生活習慣病の予防はもちろん、充実した生活をおくるうえでも有意義な行為であることが分かる。
生活習慣病対策としての運動
具体的な運動として、有酸素運動と首や関節をほぐす運動がある。ウォーキング、ジョギング、エアロビクス、サイクリングなどの有酸素運動は運動の強度がそれほど高くなくても、ある程度の時間継続でき、持久力の強い赤筋を鍛えることができる。この有酸素運動を日常的に取り入れることで、代謝が良くなり身体機能の働きが良くなる。日常的に有酸素運動を取り入れるのであればウォーキングが手軽な手段である。日常生活で電車を使っているのであれば、一駅手前で降りて歩いたり、いつもはエレベーターで昇るが途中から階段を使ったり、車で出かける時は、遠くの駐車場にとめるなど、日常生活の少しの工夫で大きな効果を得ることができる。
首や関節をほぐす運動も全身の血流を促進させ、筋肉や臓器の働きを活発化させる効果がある。具体的な運動としてはラジオ体操や8の字運動や両手振り運動である。8の字運動は体を前後に曲げる、左右に曲げる、体幹をねじる、という3つの動作で筋肉のすべて使って解きほぐし、血流を促進させる運動である。さらにはねじる運動がインナーマッスルを刺激し、脂肪燃焼効果も期待できる。
生活習慣病対策としての食事
上記で述べた運動以外にも生活習慣病の予防には様々な方法がある。その中でも食事は重要視すべき項目である。
現在日本は、世界一の長寿国となり、日本食の良さが世界的にも注目されていた。しかし、拡大する外食産業や深夜営業のコンビニエンスストアなど、社会環境の変化も後押しをし、今なお食の欧米化が進んでいる。そして行き過ぎた高カロリー食、高脂肪食などが誘因となり。高血圧、高脂血症、心疾患、脳卒中、がん、糖尿病などの生活習慣病が増加したのである。最近の研究では日本人などのモンゴル民族は節約遺伝子という遺伝子をもち、高脂肪食や肥満に特に弱いことが分かってきた。だからこそ炭水化物、脂質、たんぱく質の三大栄養素とビタミン及びミネラルの微量栄養素をいかにバランスよく摂取するかを考え、食生活を見直すことが重要となっているのである。また、食事の重要性は単に栄養の問題だけではない。できる限り家族などと、規則正しく、食事をすることが重要である。しかし、現在の日本人は多忙な日々により早く済ませてしまうことが多々ある。このような食事では満腹感は得られず、食べすぎや消化器の働きを妨げてしまい、生活習慣病のリスクを高めてしまう。そのため、食事の際にはよく噛むということが重要である。よく噛んで食べることで以下のような効果が期待できる。
1つ目は消化管が刺激され、副交感神経が優位になることである。よく噛むことで、胃腸などの消化管の働きが活発になる。消化管の働きは副交感神経に支配されているため、消化管が活発に働くようになれば、副交感神経も十分に働く。するとリンパ球などの免疫細胞が増え、病気の予防につながるのである。
2つ目は満腹中枢が刺激され、食べすぎを防げることである。噛む回数を増やす工夫としては、食事の時間を長めにとる、具材を大きめにカットする、食事中の水分摂取を少なめにするなどの工夫があげられる。
その他にも睡眠や喫煙、飲酒などの生活要因や病原体や有機物質などの外部的要因、遺伝子異常や加齢などの鵜殿的要因も踏まえて理解し、生活習慣病の予防に心がけなければならないのである。
まとめ
生活習慣病生活習慣病を発症させないためには、まず一時的予防の健康教育が重要である。家庭、地域、学校、職域において良好な生活環境、生活習慣の改善と確保を推進し、健康増進に努めることが基本である。日本人の実に3分の2近くが生活習慣病で亡くなっているということを理解し、個人の努力と社会の協力で生活習慣病の予防・改善に取り組んでいかなければならない。