生活保護法とは
生活保護法は、日本国憲法第25条に定める生存権を実現するための法として制定され、現在に至るまで社会保障制度の根幹を支える制度として機能している。
日本国憲法は第二十五条において『すべてび国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する』ときていしているが、この憲法の保障を国が実体的に具現するための一つとして制定せれたのが生活保護法である。このことは、第1条において、「この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」と規定されているところからも明らかである。
このように生活保護法は、生活に困窮する国民は健康で文化的な最低限度の生活が保障されることを権利として認めているが、それだけではなく、これらの人々の自立の助長も積極的に図っていくことをも併せて目的としている。
最低限度の生活保障とは?
生活保護法による最低限度の生活の保障は、生活費の性格によって区分された8種類の扶助により実施されている。
生活扶助
これは現行の8種類の扶助のなかで最も基本的な扶助であり、飲食物費、被服費、光熱水費、家具什器などの日常生活の需要を満たすための給付が中心として行われている。この扶助は、個人単位の費用である第1類の経費、世帯単位の費用である第2類の経費および各種加算を中心に構成されている。また、第1類の経費、第2類の経費などは、障害者などの場合などは健常者と比較して多くの経費が必要であるため、こうした個別的な特別需要を補填するために加算制度を儲けている。生活扶助は原則金銭給付となっている。
利用にあたっては、被保護者の居宅で行うことが原則となっているが、必要応じて、救護施設、更正施設などに入所させ生活扶助を行うことができることとなっている。
教育扶助
この扶助の対象となるのは、義務教育の修学に必要な費用である。これは、日本国憲法第26条第2項により就学が義務付けられていることに関連して、最低限度の生活の内容として義務教育への就学を保障しようとすることからきている。この教育扶助の具体的内容としては、義務教育に伴って必要となる学用品費、通学費、課外活動費などの費用が小・中学校別に定められた基準額によって支給されるほか、教科書に準ずる副読本的な図書、辞書の購入費、給食費などが支給されるととなっている。
利用にあたっては、原則として金銭給付となっており、通常は生活扶助と併せて支給されている。ただし、支給先としては、被保護者、親権者などのほか、学校長に対しても交付することが出来るとしている。
住宅扶助
この住宅扶助の対象となるのは、「住居」および「補修その他住宅を維持のために必要なもの」である。具体的には、被保護世帯が借家、借間住まいをしている場合に、家賃、間代、他代にあてる費用として所在地域別などに定めた基準額の範囲内の額が支給される。なお、基準額について、一般基準では満たすことができない場合には、厚生労働大臣が都道府県ごとに別に定める額の特別基準が使用できる。また、被保護者が現に居住している家屋が豪雨などによって破産した場合、一定額内の経費が支給される。
利用にあたっては、原則として金銭給付によることとなっており、通常は生活扶助と併せて、世帯主またはこれに準ずる者に対して支給される。このほかに、住宅確保の方法としては、保護施設である宿提供施設を利用させる方法があるが、、この場合には金銭給付は行われず、現物で住宅扶助の給付が行われる。
医療扶助
これは、疾病や負傷により入院または通院によって治療を必要とする場合に、生活保護の「指定医療機関」に委託して行う給付である。この給付は、入院、診療、投薬、駐車や手術などが対象になることはもちろん、入退院、通院、店員などの場合の交通費や治療の一環として必要な輸血、義肢、装具、眼鏡などの治療材料の給付も対象となっている。
利用にあたっては、現金給付を原則としている。医療の給付は、指定医療機関に委託して行われるが、この医療機関の指定は、国が開設した医療機関については厚生労働大臣の権限の委任を受けた地方厚生局長が、また、その他の医療機関については、都道府県知事が行うこととされている。
介護扶助
これは、要介護状態または要支援状態にある65歳以上の者、加齢に起因する一定範囲の疾病により要介護状態または要支援状態にある40歳以上65歳未満の者が対象となる。介護扶助の内容は、介護扶助の範囲として、居宅介護、福祉用具、住宅改修、施設介護、介護予防など、基本的に介護保険の給付対象サービスと同一の内容が規定されている。
利用にあたっては、原則として現物給付となっているが、場合によって金銭給付によることができるとされている。現金給付の方法については、医療扶助と同様、都道府県知事などが介護扶助の現物給付を担当する機関を指定し、指定介護給付に介護の給付を委託して行われる。
出産扶助
これは、分娩の介助、分娩前および後の処置などのいわゆる助産のほか、分娩に伴って必要となる一定の額の範囲内のガーゼなどの衛生材料費である。
利用にあたっては、原則としては金銭給付によることとなっており、出産に伴って必要となる費用が被保護者に交付される。
生業扶助
これは、要保護者の稼働能力を引き出し、それを助長することによって自立を図ることを目的としている。この内容は、生業費、技能修得費および就職支度費の基準からなっている。このうち、生業費は、生計の維持を目的とした小規模事業を営むもうとする被保護者に対して行われる。技能習得費は、生業に就くために必要な技能を習得する被保護者に対して行われる。就職支度費は、就職のために必要な洋服類や身のまわり品などの購入費を必要とする場合に認められる。
利用にあたっては、原則として金銭給付によることとなっているが、授産施設の利用という現物給付の方法がとられる場合もある。
葬祭扶助
これは、死亡者に対してその遺族または扶養義務者が困窮のために葬祭を行うことができない場合に適用されるほか、被保護者であった者が死亡してその葬祭を行う扶養義務者がいないとき、または遺留品の所持の乏しい死者に対してその葬祭を行う扶養義務者がいないときにおいて、それらの者の葬祭を行う第三者がいる場合にその第三者に対して行われる。
利用にあたっては、葬祭に必要最低限なものの範囲にかかる金銭を基準で定める額の範囲内で給付することによって行われるが原則であるが、必要があるときは現物給付によって行われる。これらの扶助によって私たちの最低限度の生活が保障されている。