ソーシャルワークの援助実践
ソーシャルワークの援助実践では、さまざまな場面や局面とそれらが時系列的につながっていく展開過程とがある。どの場面・局面においてもクライエントの問題を明確にし、その問題状況やニーズのアセスメント、援助の目標と課題の設定、そして援助計画を立て、実施し、それを評価するといった過程がある。このようにソーシャルワークには、問題を抱えている個人・家族・グループを直接支援する個別援助活動・小集団援助活動や、地域全体またはその中に住むある一定の人びとのため、サービス計画し、提供するなどの関節援助活動がある。直接援助活動・間接援助活動は、使われる援助技術が対象となるクライエントによって異なるため分けられるが、援助活動の過程はほぼ同じである。
ソーシャルワークの展開過程
ソーシャルワークの展開過程は以下の7つの段階に分かれている。
インテーク
インテークとは、クライエントが持っている問題に対する解決や支援を社会福祉施設や機関に提供できるかどうかの適格の可否を決めることである。通常インテークは、問題が持ち込まれた時点で、面接という形をとって行われる。社会福祉援助活動で行われる面接では、個人や家族、グループから情報を収集したり、問題の診断や治療、介入などを行うことが目的となっている。インテーク段階の面接は、1回もしくは数回で終わることが通例である。
インテーク面接において、以下の4つを明確にする必要がある。
①クライエントが何故私の前にいるのか ②どのように、または誰からこの機関のことを聞いたのか、どのように聞いたのか ③クライエントの主訴は何か ④クライエントがこの機関期待していることは何か
さらに、クライエントの名前、住所、生年月日、保険その他、また必要ならば家族構成や職業、勤務先など、クライエントに関わる機関が必要とする自身の属性の情報を調べる。クライエントに関する事項が終われば、次はこの機関のサービスやプログラムなどについて説明する。
アセスメント
アセスメントとは、問題の明確化とモニタリングのことである。
具体的には、ソーシャルワーカーが、クライエントをはじめクライエントの問題と関わる人々と、インタビュー、家庭訪問などを通して集めたクライエントに関わる全ての情報を総合的に分析・評価することである。ソーシャルワーカーは、アセスメントの情報源として、クライエントの言語的・非言語的記述や表現、アセスメントのフォーマット、関係者からの情報、心理テスト、キーパーソンとの相互作用と勝て訪問で得た情報、施設や機関の中でのワーカーとの関りや相互作用、生活史の調査、ジェノグラムやエコマップなどを活用し、情報を収集する。
このようにクライエントの課題に関する諸要因とそれらの関係性を明らかにし、ソーシャルワーカーがクライエントに対してどのような援助がどのくらい行えるのか、またその結果の予測を含めて考察しなければならない。そして、解決すべき生活生活上の課題やニーズを明確化するとともに、クライエントとそれを取り巻く環境のストレングスを明らかにし、それらが次の支援計画を策定するための基盤ともなるのである。
プランニング
プランニングとは、クライエントの問題を解決するための目標を設定し、援助計画を立てることである。
目標とは、長期目標と短期目標を設定する。
短期目標
近いうちに達成しようとする目標のことで、より日常的で、細かい目標のこと。
長期目標
いくつかの短期目標を達成することで、到達できる目標のことで、最終的に達成したいゴールのこと。
計画の際に立てた目標は、援助活動を実施した後、初めに掲げた目標が達成できたかどうかの効果の評価につながる。そのため、抽象的ではなく、具体的に設定し、可能な限り測定可能となるように設定することが求められる。また、その他の計画作成の際の留意点は、優先順位を考慮す津子と、ソーシャルワーカーとクライエントにそれぞれ知識や能力の違い、時間的な制限や限界があることを考慮すること、社会的資源の状況により、取り組むことが可能な範囲での計画にすることなどがある。そして、あくまでも計画は、ソーシャルワーカーとクライエントとの協働作業として行うことも留意しておく必要がある。
インターベンション
インターベンションとは、ソーシャルワーカーによって意図的に行われる援助活動のことである。
ソーシャルワーカーはこの介入過程で、絶えず目標や目的に向かいながら活動を展開する。伝統的なケースワークでは、介入を処遇あるいは治療という用語で表現していた。しかし、現在はそれに代わり介入という用語が用いられるようになった。それは介入が、単に狭い意味での治療、処遇にとどまらず、ソーシャルワーカーによって幅広く問題を解決したり予防したりするため、あるいは何らかの社会的な改善・推進に関わる目標を達成するためさまざまな実践を伴っているためである。
インターベンションの範囲は、主として個人に焦点を置いた心理社会的アプローチから社会政策、社会計画および社会開発への参画にまで及ぶ。この中には、人々が地域の中でサービスや社会資源を利用できるよう援助する努力だけでなく、カウンセリング、臨床ソーシャルワーク、グループワーク、社会教育活動および家族への援助や家族療法までも含まれる。さらに、施設機関の運営、コミュニティ・オーガニゼーション、社会政策および経済開発に影響を及ぼす社会的・政治的活動に携わることも含まれる。また、インターベンションには社会的環境の中で、生活する人間に重点を置くという点で、生活モデルの考え方から強調するようになったアドボカシーやエンパワーメントなどを重視する必要がある
モニタリング
モニタリングとはインターベンションが開始された後に行う現状把握のことである。
モニタリングでは、支援計画に沿って適切にサービスが実施されているか、掲げた目標の達成に近づいているか、利用者や家族の生活に変化が現れたか、新たな課題が生じていないかなどを把握する。また、いくら計画通りにサービスが行われていたとしても、利用者や家族の満足度が低ければ、計画の見直しも必要となる。サービスに対して抱いていた期待と、実際のサービスとの間にずれがないかといった点も、重要な確認事項となる。
エバリュエーション
エバリュエーションとは、一定の基準・目標をあわせて、問題解決の側面から援助活動を客観的に捉え直すことである。
エバリュエーションを行うことによって、問題解決をより合理的に進めることができる。評価には、援助活動の過程で行う評価と、最後に、終結するため全体的・総合的に行う評価がある。前者の評価は、どの過程でも一時的に立ち止まり、浮き彫りになった問題点を捉え直し、より合理的に進めていく。後者の評価は、最初に立てた目標が達成できたかどうかの効果性と無駄なく合理的に結果を生み出したかどうかといった効率性の観点から総合的に評価を行うことである。
ターミネーション
ターミネーションとは援助の終結のことである。
このターミネーションはクライエントの問題が必ずも全て解決しておかなければならない、というわけではなく、ある程度成果が見られ、後はクライエント自身で解決可能と判断された場合でも行われる。
援助関係が終結したあとも、クライエントが社会生活機能の維持。向上するための準備過程としての側面を有していることや、時として終結後にクライエントがまたいつ支援や援助を求めてくるかわからないので、クライエントとの関係をすぐに再開できるような関係づくりやアフターケアを行う必要がある。
まとめ
このような援助過程を経て、ソーシャルワークは行われるが、ソーシャルワーカーによる実践すべてがこのプロセス通りに運ぶとは限らない。そのため、プロセスの途中であっても、前の段階に戻ったり、段階間を行ったり来たりしながら螺旋状に展開することもありうる。また、何らかの理由で一連のプロセスを経る前に終結すりこともありえる。重要なことは、援助するうえで一連のプロセスを頭に入れておき、今、自分がどのプロセスにいるのかを意識化することである。