福祉ビジネスについて②

この記事は福祉ビジネス①の続きとなっています。

まだ①を見ていない方は以下のリンクから↓

第4章 各企業が運営する福祉事業

 4-1 株式会社と生協

  現在では多くの企業形態が介護サービスに参入しています。ここでは以下の2つの企業形態の参入について説明する。

 ①株式会社

 ②生協

 ①の株式会社ですが、企業の大きさは様々です。1人の会社から一部上場企業まで参入しており、その規模も最大数千億円まであります。このような様々な株式会社会社がどのようにして参入してくるのか、以下の図4を元に説明したいと思います。

   図4

           A                デイサービス開設・グループホーム開設・サ高住開設・小規模多機能型居宅介護開設         C                                              駅の中に保育所を開設    
           B                訪問看護事業開設・就労継続支援B型事業所開設・放課後等デイサービス開設・児童発達支援施設のFC展開D   
大手企業の技術を活用

 Aは主に土地の資産活用を目的に始めるケースである。比較的小さい土地でも始められるデイサービスやグループホームなどを経営するパターンが多い。さらにサ高住や小規模多機能型居宅介護を始めるに当たって補助金が受けられるのは大きな参入の動機となる。

 BはAと同様の規模ですが、土地ではなく、技術を活用するケースである。看護業務の経験を活かし訪問看護事業を立ち上げたり、就労支援経験を活かし就労継続支援事業所を立ち上げたりしている。また、コロナウイルスにより本業が気景気になった企業が障がい者グループホームをフランチャイズ展開する企業もある。こうした動きは独立開業を目指す人の後押しにもなっていると考える。

 Cは大規模な土地や資産を活用するケースである。例えば鉄道会社が駅のスペースを活用して駅の中に保育所を開設するなどがある。

 Dは大規模な技術を活用するケースである。例えばパナソニックなどは、建築の技術があるので、それを活かし、介護付き有料老人ホームなどで事業展開している。また電化製品の製造技術も活かし、介護に関する自動化の技術にも一役かっている。

 こうしてみると、株式会社が参入することは、企業にとっては新たな事業展開と利益が、福祉業界にとっては新たな技術を呼び込むチャンスとなっていることが分かる。

 ②の生協ですが、生協は会員制の組合で店舗と宅配を合わせて売り上げが3兆円もある大企業である。それは介護保険事業分野でも同様で、黒字経営を達成している。さらに小規模多機能型居宅介護、グループホーム、サ高住、有料老人ホームと事業を広く展開している。これを可能としている大きな要因の1つに事業所に対する帰属意識があげられる。冒頭の福祉業界の特殊性で福祉業界に従事する者は事業所に対する帰属意識よりも資格に対する帰属意識が高いと述べた。しかし、生協は介護保険事業の従事者の多くは、生協の理念に共感して組合員になった人達である。生協の介護保険事業に従事する人のアンケートでは、「生協が好きだから、介護事業をしている」という意見が多く見られた。こうした考えは他の福祉事業を展開する事業者も取り入れていかなければならないと考えた。

第5章 福祉業界の周辺ビジネス

 5-1 介護ロボット

 福祉業界に間接的に関わっている業界も様々な形態がある。ここでは今後需要が高まる可能性がある業界について述べたいと思う。

 その1つが介護ロボットである。2013年から介護ロボットの普及拡大が重点施策として位置付けられたが、現在でも本格的な普及には至ってない。(図5参照)

 2020年の厚生労働省が発表した、介護ロボットの効果実証に関する研究事業の結果では、特養の1フロアに9台見守り機器を導入しているフロアと、未導入のフロアで夜勤介護(直接介護)でかかる時間を調べた。それによると、導入したフロアでは約80分も介護時間を短縮することができたとのこと。

 このような容易な機器の利用を望む一方で、一時期有名であった介護者を支援するアシストスーツなどは、重すぎて使えない、といった理由から導入されずじまいとなっているとのこと。

 こうした状況は開発者と支援者と利用者のニーズが一致してないために起こっているのではないかと思う。こうした課題をクリアすることで、より良い介護を可能とするロボットが開発されるのではないかと思う。

第6章 まとめ

 これまで福祉サービスの経営状況、他企業からの参入、福祉に関わる業界について述べてきた。福祉はお金儲けをしてはならず、営利であってはならない。というイメージですが、私は財を生み出してこそ、土地や資産をフル活用し、良質なサービスが提供できると考える。人を助けるのに見返りを求めない、というステレオタイプな考えではなく、受けた見返りを享受し、経済活動、支援活動に繋げていくことが大切であると考える。

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