認知症とは
認知症とは、いったん正常に発達した知能が、後天的な器質性の脳障害によって持続的に低下する病気である。慢性、あるいは進行性の脳疾患の症状があらわれ、意識清明な状態で、記憶、思考、判断、見当識、計算、学習能力、言語等、高次大脳皮質機能の症状がある。また、感情・意欲面の変化が生じ、病前性格の変化(人格変化)もあらわれる。これらによって、仕事、日常の社会的活動、他者との人間関係が損なわれる状態のことをいう。
認知症を呈する疾患
認知症を呈する疾患には脳血管障害、変性疾患、感染症、腫瘍、外傷、髄液循環障害、内分泌障害、中毒、栄養障害などがあり原因は様々であるが、特にアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症が代表的である。
認知症の分類ごとの認知症の出現頻度
脳血管性認知症42.8%、アルツハイマー型老年認知症32.0%、混合性認知症14.4%、その他の認知症10.8%程度である。脳血管性認知症(VD)とは、アルツハイマー型認知症とともに、発症数が多い(アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症とで、認知症全体の90%に達すると言われる。)以前は、日本ではVDの方が多かったが、生活スタイルの欧米化、あるいは健康管理に対する意識の高まりによって、最近はVDの比率は落ちている。
以下では脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症について説明する。
脳血管性認知症
脳血管性認知症の特徴
①発症時期が比較的はっきりしている。
②なんらかの身体疾患を有する場合が多い。
③段階的に悪化する。
④末期まで病識があることが多い。
⑤人格は比較的保たれやすいが、感情障害・感情失禁が起こりやすい。
⑥ADLの低下が認められることが多い。
脳血管性認知症の経過
①プラトー型:途中で一定化(原因疾患への対応による。)
②一時回復型(治療やリハビリによって改善がみられるケース。)
③階段型:治療や健康管理が十分になされなかった場合等④悪化型:経過中に合併症を併発し、一挙に悪化するケース。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症とはアルツハイマー型認知症とは老人斑、神経原線維変化、神経細胞の脱落などが共通して認められ、徐々に脳神経細胞が破壊されて細胞死を起こし、記憶の中心である海馬を含む側頭葉を中心に大脳が広範囲に障害される。今後、社会が高齢化すると、有病率が増えると予想される。
アルツハイマー型認知症の特徴
①徐々に進行し、治癒することが無い。
②本人に自覚が乏しい。
③高齢になるほど、発症率が高くなる。
アルツハイマー型認知症の主症状
①記憶障害:たった今、食事をしたことを忘れるなど。本人に自覚がない。
②見当識障害:現在の日時、時間、場所、人物がわからなくなる。
③判断力の障害:正しい状況判断が出来なくなる。(金銭の支払いが出来ない等)
④言語障害:流暢な会話が出来なくなる。(言語理解や言語選択の低下)
アルツハイマー型認知症の経過
①前期(軽度):自立した生活は出来るが、主に記銘力が低下する記憶障害が出現し、日常活動ができなくなってくる。
②中期(中等度):場所や時間がわからなくなり、古い記憶も失われるようになる。徘徊や異常行動が始まり、自立が困難になる。
③末期(重度):家族の名前や顔がわからなくなり、会話も成り立たない。失禁も見られるようになり、最後には寝たきりになる。