BPSDに対する支援・対応
BPSDの支援をしていく上で大切なことは、何が精神症状をひどくしているのか、BPSDを出させているのかの原因究明と、対象者が安心できる環境(職員・家族の対応を含む)を整えることである。
そのためには以下のような症状に対する視点が重要となる。
徘徊
無理に止めることは危険であり、安全面や健康面に注意しながら徘徊を認めることが大切になる。また、徘徊癖がある場合には、迷子札(氏名や住所、電話番号)を持たせておくと良い。
妄想
まず本人の興奮をしずめて冷静にさせることが大切である。言動におかしな部分があっても否定したり訂正したりしてはいけない。また、本人の過去のつらい経験や生活に尾を引いている可能性もある。訴えを聞く時には根気よく聞き、手を握ったり、肩をだきよせてスキンシップをはかりながら聞いてあげると、本人も満足感をもち、気持ちを落ち着かせることができるものである。
不眠
環境の変化に気を配り、無理をさせない程度に運動すると良い。また、寝る前にマッサージや入浴などをして血液の循環を良くすると安眠につながる。
④失禁と用便
自分でトイレへ行ける場合はトイレを部屋の近くにすることが望まれる。また、トイレにわかりやすい張り紙を付けるなどすると良い。普段の生活では、水分の摂取量は夕食後には特に気を付けるべきである。衣服にすぐに着脱できる工夫をしておき、トイレに定期的に連れていき、事前に防ぐのが望ましい。自分の部屋がわからなくなるなどの理由でトイレへ行けない場合は、ポータブルトイレを用いると良い。
暴言、暴力
暴力や暴言にもそれなりの原因があることが多いので、よくその原因を聞いて一緒に解決していくとおさまることが多い。しかし、幻覚によって生じているものや、あまり度を超すものは、鎮静剤や病院収集もやむをえず医師に相談した方が良い。
BPSDは意味を持って行われており、その行動を不用意に防いだりするのではなく、なぜその行動が現れたのか理由を考えることがとても重要であると考える。
また、症状の軽減につながらない場合でも、本人にとってよい時間、楽しい時間を多く経験できるようなアプローチが求められる。
認知症の予防
脳血管性認知症
脳血管性認知症の予防脳血管性認知症の原因は脳血管障害であり、かつ脳血管障害の原因として脳動脈硬化の進展が指摘できることから、まず脳動脈硬化を予防することが、この型の認知症の予防につながる。脳動脈硬化を予防するためには、動脈硬化の危険因子とされている高血圧、高脂血症などの予防、抑制を遅くとも20~30歳代より始めることが望まれる。また、食生活などの切換えは必ずしも容易ではないことから若い時期から良い食生活、生活様式を習慣としておくことが大切である。それにより、40~50年後の認知症をより少なくし、より軽症とすることに役立つのである。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型老年認知症の予防アルツハイマー型認知症の予防は、脳血管性認知症のような具体的な予防因子がない。しかし、頭を使う事により予防する、という方法がある。その方法(老化や認知症を防ぐ頭の使い方)を説明する。
アルツハイマー型認知症の予防方法
(1)頭を多様に使う。生きている以上頭を使わない人はいない。朝起きてから寝るまで体を動かし、刺激を受けており、すべて脳を経ての操作である。しかし、脳の老化(認知症)を防ぐにはその使い方に問題がある。神経系には慣れの現象があり、同じ刺激のみを繰り返し受けていると慣れの現象が出現し、刺激を刺激として感じなくなることが一つの重要な特徴である。脳はその代表といえるもので同じような使い方のみでは刺激として受け取り難くなる。したがって多様に使うことが大切となる。多様とはいろいろ事柄を配慮、考察すること、またいろいろな事柄に興味と関心を持つことである。このことは脳に絶えず刺激を与えて脳を働かせることになり、脳卒中後遺症例における無為とは逆のことになり、脳の老化を防ぐことに役立ち、ひいては認知症の予防につながり得るのである。
(2)頭に刺激を与える。頭の刺激に対して反応するごとく使う中枢神経系は外部よりいろいろな刺激を受け、この刺激に対して配慮の後に反応するのがその生理学基本原則である。その代表の脳は、刺激(情報)を多様に受け、考察判断の後に反応(表現)するというのが基本的な働きの様式である。言い換えれば刺激に対して反応を示さない。あるいは反応の少ないことは、脳の活動の低下を意味する。すなわち、外部よりの刺激に対し反応を十分示すようすることが脳本来の働きであり、適切な使い方である。刺激に対して反応するということは見たこと、聞いたこと、感じたことなどを言葉、文章などで表現することである。現代の表現で述べると情報を整理して表現することで、また、事柄に対して決断することである。また周囲に対して気くばりを細やかにすることである。刺激に対して反応を示す頭の使い方を具体的に示すと、例えば俳句、短歌を作ること、自分の意思をまとめて発表すること、文章を書く、日記をつける、絵を書く、などである。その他にも、彫刻を行なったり、楽器を演奏することなどもこれに属する。 一般社会の仕事、事業についていえば、十分な考察、配慮の下に物事に決断を下すことなどである。これらが脳の老化を遅くし、認知症を予防するには頭を多様に使いかつ刺激に対して反応を示すごとき使い方である。
(3)運動する。 運動により、それぞれの部位の中枢である大脳皮質の循環、代謝が盛んになり、脳血流が増加する。このことは脳の老化の予防に役立つ。また、運動は足腰を鍛え、寝たきりを防ぐこともでき、骨を丈夫にし、骨折をしにくくすることも可能であり、認知症の予防にもつながる。
以上述べた(1)・(2)・(3)の事柄は脳の老化を遅くし、認知症の予防に役立ち、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症においても通用するものである。