福祉と教育の共通点
福祉と教育という言葉には共通する意味が込められている。
福祉の意味
すべての人間が心身ともに健全に発達し、自分の力で物事成し遂げ、社会の一員としての役割を十分に果たすことができるように、必要な保護や援助を行うことを意味している。具体的には、援助を必要とする人たちが幸せに生きることができるように支援したり、自分の力で精一杯発揮して生きることを妨げている人たちの、その妨げとなっている原因を取り除き、基本的人権を保護し、確立することである。
教育の意味
生物学上のヒトとして生まれ、いまだ人間として特性をもたない存在に、ひととしての特性を獲得させることを目指して行われる人間の社会的な営みである。このように、全ての人々が心身ともに健やかに成長し、自立することができるように、平等の保護や援助を行うという点で共通している。
福祉と教育は共に人を対象としている。そのため、それぞれ人をめぐりさまざまな問題が生じている。
人の支援における問題点
福祉の現場の問題点
では、何らかの福祉的な問題を抱えた人びとが解決の手口を探そうと援助者を尋ねてくる。その際、相談者が何に困っているのか、どうなりたいのかをコミュニケーションをはかり、相談者が望む今後を考える必要がある。しかし、今日のように社会が急激に変動する時代には、その変化のスピードに適応できない高齢者や子どもなどが多く存在している。そのため、従来よりも複雑な問題を抱えており、相談を慎重に行わなければ、十分な援助が困難となっている。
教育の現場の問題点
学習活動と環境との関わりが重要である。人間は、様々な環境の中で学習活動を行う。また、人間は、学習活動を通して様々な事象に適応していく。特に、日常生活の中から学習活動が生まれ、その活動内容に深まりを見出すためには、人的、物的環境からのすぐれた刺激が必要である。このようにして生まれた学習活動が、活動者自身の中身を充実させ、すでに持っている力を一層深めたり、新しい力を身につけたりする時、人間は成長し発達を遂げていることになる。そのため、学習活動や生徒指導を進めていくには、児童生徒一人ひとりの行動やその背景となっている要因を正しく客観的に理解することが重要である。児童生徒の理解には以下の領域を把握することが重要である。
①身体的側面。これは、体格や運動能力、健康状態、視力や聴力といった身体的特性からの生徒理解であり、最も基本的なアプローチである。
②心理的側面。これは、学力や知能、性格、適正、興味や意欲、価値観などの主に心理的な個人特性からなる生徒理解である。
③社会的側面。これは家庭環境や子どもを取り巻く地域社会の文化風土を正確に理解し指導を参加するものである。
しかし、職務の多量さ、複雑さから、子どもと向き合う時間がとりにくくなっているという状況がある。この状況が積み重なると、子どもの小さな変化に気づくことができず、いじめや不登校などを見逃す大きな要因となってしまうのである
福祉・教育に共通する重要事項
このように福祉と教育は共にコミュニケーションが重要であるということが分かる。コミュニケーションは、人間が存在する基盤の1つである。しかしコミュニケーションの方法は多種多様であり、理解するということだけも、相手の言葉を耳で聞いて理解する聴覚的理解と、相手の書いた文字を目で読んで理解する視覚的理解がある。また、自分の考えや気持ちを伝える方法には、口に出して伝える発話と、文字に書いて伝える書字がある。人は、これらの4つポイントを組み合わせ、コミュニケーションをとっている。
コミュニケーションには言葉以外のコミュニケーションも重要な役割がある。表情や視線、姿勢、身振りといった身体の動き、服装や髪型、化粧とった身だしなみ、さらには対人距離などが大きな役割を果たしている。また、同じ言葉を話していても、声の大きさやメリハリのつけ方、話す速さ、イントネーションなどで、相手への伝わり方は大きく異なる。こうした言葉以外の非言語的コミュニケーションをうまく使うことで、親密な関係を形成することが出来るのである。人は自分に与えられた情報が曖昧で判断に迷うときは、目に見える一部の手がかりに基づいて直感的に判断する傾向がある。高齢者や子どもなど、理解力や判断能力が低い人へは、目に見える手がかりである非言語的コミュニケーションの果たす役割は非常に大きいと言える。
その他にも、対人援助にかかわる援助者の行動規範であるバイステックの7原則というものがある。これには、利用者を個人としてとらえ、利用者の問題状況に応じて個別的な対応をする個別化の原則、援助者が利用者の考えや感情(肯定的な感情も否定的な感情も)を自由に表現できるように働きかける意図的な感情表出の原則、援助者自身の感情を自覚し吟味しながら、援助者が利用者の表出した感情を受容的・共感的に受け止める統制された情緒関与の原則、利用者の言動や行動を、一般の価値基準や援助者自身の価値基準から良いとか悪いとか評価する態度を慎み、利用者のあるがままを受け入れるように努める非審判的態度の原則、相談者の意思に基づき、自己決定ができるように援助していく自己決定の原則、利用者から信頼を得るため、援助関係のなかで利用者の言動や状況を秘密(プライバシー)として守らねばならないという秘密保持の原則、援助者が個人的な関心興味から関わってはいけないという専門手援助関係の原則がある。このように、相手を理解し、援助し成長を助けるためには、上記のようなコミュニケーション手段を用いて信頼関係を形成していかなければならないのである。
まとめ
上記のように、福祉と教育が密接に関わっており、教育も福祉もさまざまな状況の中で生活し、さまざまな問題や課題を抱えている子どもや高齢者を受け入れながら行われているのである。すなわち、福祉や教育が専門的な立場から一人ひとりに応じた人格の形成と心身の発達を促すものであると考えるならば、さまざまな福祉的教育観を導入し、きめ細やかな福祉サービスをも提供する必要性が生じる。ここに福祉と教育を学習する意義を見出すことができる。