相談援助における人と環境との交互作用の視点について

  • 2月 24, 2021
  • 9月 13, 2021
  • 福祉
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目次

ソーシャルワークで求められる視点

 ソーシャルワークは、クライエントと環境との関係を構造的に理解することが求められる。ソーシャルワークでは、そのはたらきかけの対象となるのがクライエントである。クライエントは、個人の場合もあれば、家族、グループ、組織、団体、地域住民などの場合もある。また、環境のなかにおかれているかということを分析的に把握することが求められる。 

 ソーシャルワークでは、クライエントの抱える福祉課題の緩和・解決を図ることが重要な課題となっている。しかしその場合、文字通りクライエントが抱えてる問題というよりは、多くの福祉課題があることで困難な状況(=環境)におかれているクライエントというとらえ方が重要となる。

 したがってクライエントがその環境と相互に影響しあう接点に介入することで、福祉課題の緩和・解決を図るという方法をとる。それだけにソーシャルワークにおいては、クライエントが置かれている環境を理解し、クライエントと環境との関係を調整することが重要である。 

クライエントと環境との関係とは

 環境という概念は、時には資源システムや社会資源といった言葉に置き換えられる場合が多い。このクライエント環境なり資源との交互関係での問題点をとらえ、その関係を調整することがソーシャルワークの中心であることは、これまで多くのソーシャルワークの研究者によって主張されてきた。

国外の研究者

 例えば、ケースワークを初めて理論化したリッチモンドは、「人と環境との関係の問題」としてケースワークの対象をとらえた。またバーレットは、「ソーシャルワークが関心を向け責任をとるのは、人間と環境との交換の結果に関する知識と価値を最大限十分に、また自由に活用していけるよう、社会生活機能を理解していくところにある」と述べている。その他にも、ソーシャルワークを生態学的にとらえるジャーメインらは、「人々のもっている内的な資源と彼らの生活状況での外的な社旗資源を合致させることがソーシャルワークの仕事である」としている。

 それゆえ、人々の問題状況は、諸資源のギブ・アンド・テイク関係の中で生じる交互作用改定の結果とみている。

 2000年にカナダのモントリオールで国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーカー学校連盟(IASSW)が総会を開催し、そこでソーシャルワークを定義した際にも、ソーシャルワークは人と環境とが相互に作用する場面に焦点を当てて支援する者であることが述べられていた。

国内の研究

 日本でも、岡村重夫が社会関係という概念を使用し、ソーシャルワークを原理づけている。社会関係とはすべての個人が生活上の要求を充足するために利用する社会制度との間に取り結ぶ関係であるとし、「社会関係の主体的側面に視点をとらえて、社会関係の困難を生活困難として把握するところに社会福祉固有の対象領域が開ける」とする。

 この社会福祉固有の領域とは、以下の3つの状態であるとしている。

主体的側面からみて、個人のもつ多数の社会関係が相互に矛盾している状態
個人が社会生活の基本的要求を充足するのに必要な社会関係をもって、社会制度を利用できない状態
社会制度とクライエントとの間の意見や意思の疎通を欠き、断絶状態と制度改善の弾力を失った状態

 岡村を「社会制度」という用語でとらえ、人と社会制度との関係を「社会関係」とし、その関係に焦点を当てることでソーシャルワークを原理づけている。 

ソーシャルワークがとらえる人と環境との関係

 ソーシャルワークがとらえる人と環境との関係についてであるが、この関係は人が環境に影響を与えたり、あるいは環境が人に影響を与えるといった原因・結果に基づく相互関係ではない。

 人と環境が相互に影響し合っている環境であり、それを相互作用関係としてとらえることであり、これが生活モデルの考え方である。世界保健機関が2001年に障害のとらえ方として国際生活機能分類を提唱したが、ここでも人と環境の関係を従来の原因・結果という因果論的な関係から、交互連関作用として障害をとらえる考え方に移行しており、ソーシャルワークと類似の考え方になっている。

 以上の論者から考えから、ソーシャルワークの捉える人と環境との関係とは以下のように定義される。

第一に、問題が生じている関係そのものに目を向けて調整していく。

第二に、環境の修正や開発を行ったり、クライエント側の対処能力を高めるために行動する。この結果、クライエントの社会生活問題を解決・緩和していく。

 

人ー環境の実践

 今日のソーシャルワークでは、「状況の中の人」といったパラダイムは当たり前となってきているが、援助過程のアセスメントではこのような考えは極めて重要であるといえる。なぜなら、アセスメントにおいては、個人のみの問題や責任として把握するのではなく、個人と環境との多様な交互作用の結果であるととらえる必要があるためである。

 そのようなことから環境の検討を重視した実践は、「人ー環境の実践」として再公式化されている。その特徴は以下の3点にある。

ストレスに満ちた生活状況に対処し、環境の課題に応え、環境資源を十分に活用できるように、クライエントの能力を獲得したいという感覚を向上させること

多面的な考察をしながら個人的なソーシャルネットワークの動員を特に強調し、環境における活発なアセスメント、契約、介入によってこの目標を達成すること

3つ目は集団的な活動によって社会的なエンパワメントを向上させるために、個別の関心事を関連づけること

 3つ目の項目にあるエンパワメントの概念には、個人的、対人的、社会的次元がある。

 「個人的エンパワメントとは、より豊かなウェルビーイングと環境一般のなかでの行動基盤としての個人的パワー、効力感、力量の発達である。対人的エンパワメントは、批判的な認識を発展させ、問題解決、自己主張、重要な生活の文脈に影響を与える能力を豊かにする他者との相互作用を意味する。社会的エンパワメント、あるいは政治的エンパワメントは、ソーシャルアクションと変革的行動への集合的参加に主に関連している」とされている。

 このようなことから「人ー環境の実践」のとらえ方は、個人の行動や問題を社会的あるいは環境的な文脈において整理すること、カウンセリング的な「臨床的サービス」と「具体的なサービス」とを統合させること、私的・個人的な問題を社会的・公共的な問題に引き上げること、といったソーシャルワークが内包していた伝統的な考え方をさらい強調したものであるといえる。 

 そのようなことを踏まえ、ソーシャルワーカーは利用者のエンパワメントを支援の中心におきながら、問題の発生している人と生活環境との接点を明確にし、生活課題(生活ストレス)を生み出しているストレッサー(困難状況、葛藤状況)をアセスメントし、介入していくという枠組み・構造が必要となるのである。

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