福祉サービスにおける組織と経営について述べよ

  • 10月 4, 2020
  • 9月 13, 2021
  • 福祉
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 1.福祉サービスとは

 福祉サービスという用語が法文上で使用されたのは、1990年の社会福祉事業法改正の際であるとされる。それは、「処遇を受ける者」から「福祉サービス利用者」への変化であり、権利主体としての福祉サービスの消費者の登場を意味する。福祉サービスの中には、生活保護、児童福祉、老人福祉、身体障害者、知的障害者、精神保健および精神障害者福祉などさまざまものがある。

 

2.福祉サービスにおける組織とは

 福祉サービスを提供するものに組織がある。しかし、組織がただ存在するだけでは十分な機能は発揮されない。そもそも組織が、統合体として機能していくためには、個々人の諸活動・諸力がシステムとして最適に統合され、継続的に調整される構造が整備される必要がある。他の組織と同様、福祉サービスについても、唯一絶対に最良の組織形態は存在しえない。そこで、組織の構造を決定する際に、以下の4つの原則が重要視された。1つ目は専門化の原則である。組織の存在意義は、個人強みを最大化し、弱みを無効にすることである。組織がその意義を発揮しうるのは、組織活動が特定の役割ごとに専門分化され、そして専門分化されたすべての職務が組織活動として適切に再統合される場合である。組織構成員は、専門化により特定の職務に専念し、熟練することによって効率性・生産性を向上させることができる。2つ目は権限・責任一致の原則である。組織構成員は、組織内の階層構造に基づいて、意思決定を行うことができる権限に対応して、職務に対する責任が割り当てられる。階層が高まるにしたがって意思決定の権限が大きくなると同時に、職務に対する相応の責任を負わなければならない。3つ目は命令統一性の原則である。組織規模の拡大にともなって、部門・部署の増加や階層化が進む。組織としての統一的行動を堅持するためには、情報や命令の統一性を確保し、情報伝達経路および命令系統の一元化を図る必要がある。4つ目はスパン・オブ・コントロールである。1人の管理者が有効に指揮監督できる直接の部下の人数には物理的・能力的に限界がある。管理者が統制範囲を超えた部下を持つと管理効率の低下を招くため、管理者の統制可能範囲と管理効率のバランスを考慮した部下の人数、それに対応した階層数に制限あるいは拡大する必要がある。

 

3.組織としてのあり方とは

 現代社会は、あらゆる組織が固有の目的や機能を遂行し、社会的使命を果たすことによって支えられている。企業が生産や販売などの経済活動を通じて経済価値を創造するのと同様に、福祉サービス組織は、社会に対して福祉サービスを供給することによって固有の目的や機能を遂行し、現代社会に不可欠な組織としての使命を果たさなければならない。福祉サービスの組織といった場合には、介護や福祉にかかる公的なサービスを提供する組織をさすこととし、主に社会市場に参加する組織を念頭に置く。もちろん、それらの組織が制度外のボランタリーな活動や民間市場における活動を行うことも視野の中に入れておく必要がある。

 

4.福祉サービスの経営とは

 福祉サービスの経営とは、サービス利用者の福祉の実現という社会的目的を達成するために行うサービス提供にかかる活動全体を言う。このような社会的使命を達成する活動である限り、社会福祉法人、NPO法人、株式会社などの各組織が行う福祉サービスの提供は公益的活動であり経営である、と言える。このような意味で、福祉サービス経営の基本的あり方としてドラッガーによる非営利組織の経営をモデルとすることは的を外れているとは言えない。ドラッガーは、非営利組織の経営の重要性について以下の3つを力説している。1つ目は使命である。非営利機関は、人と社会の変革を目的としている。したがって、いかなる使命を非営利機関は果たしうるか、そして、その使命をどのように定めるかという問題が重要である。使命達成のためには、具体的行動目標を設定しなければならない。2つ目は戦略である。戦略が、非営利機関の使命と目的を行動に転化させる。戦略は、市場を知ることから始まる。誰が顧客か、誰が顧客であるべきか、誰が顧客になりうるかを知ることから始まる。また、効果的な運営のための改善とイノベーションを行う戦略が必要であるとする。3つ目は成果である。いかなる機関にとっても、最終的な評価は、成果である。非営利機関はすべて、人間と社会を変革するうえで成果を上げるために存在している。成果を明確化することは難しいが、答えるべきであるとする。

 

5.変化する社会情勢と組織

 現在、多様化する社会状況の変化に伴い、様々な分野で構造改革が進められています。こうした流れは、社会福祉の領域でも例外ではない。「少子・高齢化」、「家族機能の変化」、「低経済成長」など、福祉を取り巻く社会環境の変化により、これまでの社会福祉の枠組みでは、国民の福祉に対するニーズへの対応が困難となってきました。1998年に厚生省によりまとめられた社会福祉基礎構造改革において改革の基本的な方向が示され、それを受けて、社会福祉関係法令の整備、介護保険制度の導入など、抜本的な改革が進められてきている。これらの改革の基本理念を端的に示すキーワードとしては「利用者本位」や「措置から契約へ」などが挙げられる。これまでの福祉は、サービスを提供する側に決定権があったが、現在は、サービスを受ける側の利用者が主体となって、サービス提供事業者を「選択」した上で「契約」し、サービスが受けられるようになりました。一方、サービスを提供する事業者間にも「競い合い」が生じ、顧客の獲得に向けての「サービスの質の向上」が求められる。特に介護保険や障害者の支援費サービスにおいては、民間企業、NPO法人などが続々と参入しているが、今後はさらに規制緩和が進み、競争に一層拍車がかかる方向にあることは間違いない。

 

6.求められる福祉サービス提供像

 このような背景のもと、今、福祉サービス提供事業者には、自らの組織の理念や目的の実現に向けて、これまでの「運営体制」から、効率的な「経営体制」への変革、すなわち「経営改革」への取組みに着手することが求められている。この福祉サービス提供事業者の「経営改革」が目指すべきものは、「サービスの質の向上」にある。もちろん、それぞれの組織ごとに経営理念、経営目標は異なるものと思われるが、その大前提となる基本的な考え方として、質の高いサービスを提供するということは、福祉サービス提供事業者にとっては、最も尊重されるべき使命であり、優先されるべき経営の目的であると言える。

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