社会福祉士に求められる資質について

  • 10月 4, 2020
  • 9月 13, 2021
  • 福祉
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1.社会福祉士とは

 社会福祉士は、専門的知識と技術を統合的に修得し、社会福祉援助技術を体得し、主として相談援助を業とする専門職として位置づけられている。そのため、知識はもちろん、社会的な危機などにさらされている人びとの話を聞き、自己実現ができるように助言等を行う相談力も重要となっている。

2.社会福祉士における相談とは

 相談とは、個別の問題を、他者の知見を活用して解決していくためのコミュニケーションである。すなわち、人は困ったときには誰かに相談する、ということである。人間がこの世に生まれ、言葉を持った時からあるコミュニケーションなのである。また、相談とは人間がより良く生きていくために必要不可欠なものと言える。

3.相談が持つ重要性とは

 人間は全てのことを自分の力だけで解決することができないからである。人生の様々なステージを経験する中で、私たちは悩み、多くの問題を抱える。それら全て一から勉強して、自分で解決策を見つけ出すことは不可能である。また、どんなに情報社会が成熟したとはいえ、いくらネット検索をしたり、書籍を読んだとしても、一般的な情報しか載っていないことから、自分の問題は解決しないのである。そのため、社会福祉士のように相談援助職を業とする者にとって、相談というコミュニケーションは重要な資質の一つであることがわかる。

4.相談の効果的に活用するためのルール

 この資質を十分に活かすためには、相談における特有のコミュニケーションのルールや作法を理解する必要がある。そのルールや作法には主なものとして以下の4つがあげられる。
 1つ目は、自己覚知である。これは自分のことをどれくらい分かっているか、ということである。相談援助では、相談の内容が深刻であればあるほど、人間対人間という、ある意味人間力のぶつかり合いになる。例えば、生死を左右するような健康の悩み、生活に密着するお金の悩み、この先の相談者の人生を大きく左右してするような重要な岐路についての悩みなど、さまざまである。そのような深刻な相談では、私たちの感情が乱れてしまうことことがある。そのためにも、いかなる場合でも、冷静に対応できるように、自分自身を知らなくてはならないのである。
 2つ目は、共感である。共感とは、感情を共有することである。相談者の話やしぐさというのは、感情を伴う。その感情を分かち合うということは、相談者にとって、上辺だけでなく深い部分で、自分のことを理解してもらえたという実感につながる。その実感は「この人だったら相談できる」という、まさに信頼感なのである。この共感には2つの段階がある。1つは、場、空気を共有するという段階。もう一つが、感情そのものを共有するという段階である。場、空気の共有とは、「今、この場」を一緒に経験するということである。そのためにも、援助者が表現している感情を「感じる」ことが必要となり、さらに、どんな感情も「受け止める」ことが欠かせない。このように感情を表現した、場、空気を一緒に体験するということが共感の第一ステップなのである。そして第二ステップが感情そのものを共有することである。そのために、相談された側の私たちが感情を表現する。これには、相談者の問題に伴う感情そのまま表現する場合と、引き出された私たちの感情を、言葉や言葉以外のコミュニケーションで表現する場合がある。このような深いレベルでの交流ができると、言葉にできない信頼感をもたらすことができる。
 3つ目は、基本的なコミュニケーション技術である。このコミュニケーション技術における方法は多種多様であり、相手の言葉を耳で聞いて理解する聴覚的理解と、相手の書いた文字を目で読んで理解する視覚的理解がある。また、自分の考えや気持ちを伝える方法には、口に出して伝える発話と、文字に書いて伝える書字がある。コミュニケーションには言葉以外のコミュニケーションも重要な役割がある。表情や視線、姿勢、身振りといった身体の動き、服装や髪型、化粧とった身だしなみ、さらには対人距離などが大きな役割を果たしている。また、同じ言葉を話していても、声の大きさやメリハリのつけ方、話す速さ、イントネーションなどで、相手への伝わり方は大きく異なる。こうした言葉以外の非言語的コミュニケーションをうまく使うことで、親密な関係を形成することが出来るのである。
 4つ目は、基本的な面接技術である。この面接技術の一つに対人援助にかかわる援助者の行動規範であるバイステックの7原則というものがある。これには、利用者を個人としてとらえ、利用者の問題状況に応じて個別的な対応をする個別化の原則、援助者が利用者の考えや感情(肯定的な感情も否定的な感情も)を自由に表現できるように働きかける意図的な感情表出の原則、援助者自身の感情を自覚し吟味しながら、援助者が利用者の表出した感情を受容的・共感的に受け止める統制された情緒関与の原則、利用者の言動や行動を、一般の価値基準や援助者自身の価値基準から良いとか悪いとか評価する態度を慎み、利用者のあるがままを受け入れるように努める非審判的態度の原則、相談者の意思に基づき、自己決定ができるように援助していく自己決定の原則、利用者から信頼を得るため、援助関係のなかで利用者の言動や状況を秘密(プライバシー)として守らねばならないという秘密保持の原則、援助者が個人的な関心興味から関わってはいけないという専門手援助関係の原則がある。このように、相手を理解し、援助し成長を助けるためには、上記のようなコミュニケーション手段を用いて信頼関係を形成していかなければならないのである。
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